日曜の午後、君の名を叫ぶ

午後3時40分、聞き慣れたファンファーレが鳴り響き、皐月賞の始まりを告げる。
各馬がゲートインしているが、瞳には一頭の馬の姿しか見えない。そして、右手にはその馬の名前が刻まれた単勝馬券を握り締めている。
レースが開催される中山競馬場から遥か離れた北の大地にあるウインズで、その馬の勝利を心から信じ、じっと見つめる。馬の名前はディープインパクト。デビューから3戦3勝で圧倒的な一番人気に支持されている馬だ。
過去、幾多の馬が圧倒的な人気に支持されつつも敗れ去ったケースがあり、ディープインパクトにもその可能性があることは否めない。しかし、全幅の信頼を乗せて願いを託す。きっと勝つ。きっと勝つ、と自分に言い聞かせながら。
ゲートが開いた瞬間、ディープは少し躓いて後方からのレースとなってしまった。心の片隅に小さな不安が生じるが、それを上回る期待でもって何とかかき消す。次第にディープが中段の位置につけてきている。第3コーナーのあたりで、先頭集団に襲いかかろうという前走の弥生賞のような攻め方で上がってきている。これなら勝てそうだと期待を込めつつ、固唾を呑む。ずっと黙って見守っていたが、次第に呼吸が震えているのが自分でも分かる。
「ディープ!」
第4コーナーを曲がり、最後の直線に出た瞬間、不意に彼の名を叫ぶ。周りに人がいるのにも関わらず、大声が出てしまう。彼の元に声が届くわけがない、それは分かっている。だけど、自分の思いの強さを伝えるためにもどうしても叫ばずにはいられなかった。
「ディープ、差せー!」
また口から彼の名が漏れた。自分の声が彼に届いたわけじゃないが、彼は物凄い末脚を使って、他の馬を抜き去り、やがては置き去りにしていく。
「ディープ、そのまま行け〜!」
勝利を確信しつつも、体中から漲る何かがまだ彼の名前を呼び続けさせる。一瞬の間を置いて、彼は先頭でゴールした。両手の拳を強く握り締めて、ガッツポーズを作る。力が入っているのか、両腕は小刻みに震えていた。
だが、その震えはやがて人為的な震えから自然な震えと変わった。あまりにも強い勝ち方に、鳥肌が立っているのが分かる。これはさっきまでみぞれ混じりの雨に濡れていたことから来るものではなく、彼がもたらした衝撃、まさにディープインパクトによって生み出されたものなのだ。そう確信したとき、彼に惜しみない拍手を送っている自分がいた。
去年の夏から期待していた一頭の馬が1分59秒2の間に残した伝説の余韻に浸りながら。

……とまぁ、小説風に書いてみました(私小説風だとやっぱり視点が一人よがりになるのかな?)。でもね、本当にすっげー、もうすっげー感動した。
やっぱり損得勘定を抜きにして心から応援している馬が勝ったときの喜びは一入だー。久しぶりにスカッとした。何か再び馬券生活を始めちゃいそうな勢いだ。でも、仮に再開するとしても、買うのは単勝オンリーで行くか。今日だってシックスセンスが来るなんて思ってなかったし(要するに映画のタイトルと同じ名前の馬が1位・2位?)。
こりゃ、ダービーも当然ディープインパクト単勝馬券勝負行くしかないでしょう。しかも、ちょっと心強いデータも発見。4月17日に行われた過去の皐月賞馬にはミスターシービーナリタブライアンと言う3冠馬の先輩がいるではないか。こうなったら、ディープインパクトの3冠の可能性を信じてこれから先も応援していきます!