日曜の午後、君の名を叫ぶ−第3章−

午後3時40分、鳴り響くファンファーレとともに、自分の心臓の鼓動が高鳴るのを感じていた。
皐月賞、ダービー同様、視界には一頭の馬以外に何も映らない。圧倒的1番人気に支持され、史上2頭目の無敗の3冠馬を目指すディープインパクト以外に。
スムーズにゲートインが進むことに少し安心しつつ、スタートの時を待つ。少しして、ゲートが開いた。今日は出遅れなかったようだ。
しかし、今までのレースぶりとはちょっと様子が違うことに気づく。首を上下に動かし、いつものように落ち着いた素振りが見えない。行きたがっているのを必死になだめる姿を見て、言いようのない不安が胸の中でざわめく。しかし、ディープを信じて、レースを見守ることに。
ここ数戦のパターンとなっている向こう正面から3コーナーにかけてのマクリも見られないまま、いつしか最後の直線に差し掛かっている(あとでビデオを見て気づいたけど、ちゃんとマクっていたのね)。

人目を少し気にしつつも、彼の名を呼ぶ。声を震わせながらも「差せ!」と叫ぶ。
残り100メートルになって、ようやく先頭を走っていたアドマイヤジャパンを捕らえ、先頭でゴールした。その瞬間、右手に彼の名が刻まれた単勝馬券を握り締めていたことも忘れ、彼の偉業を称えるべく力強く拍手をしている自分の姿に気づく。
去年の夏、単に名前がカッコイイと理由だけでPOG指名した馬が、1年数ヵ月後には歴史に残る名馬になるだとなんて、当時の自分は思いもしなかった。だが、今の自分の瞳に映っているのは、その偉業を果たした名馬なのだ。

結局、単勝の倍率は1.0倍で、馬券は的中すれども利益はなしと言うオチが付いてしまったが、こんな歴史的瞬間を目の当たりにできただけでもお金では買えない価値があるし、それだけで十分だ。ずっと彼を応援し続けてよかったと心の底から思えただけで、かけがえのないものを手に入れたのだから。

……とまた、独りよがりの私小説(になるのか?)を書いてしまいましたが、本当に感動しました。もしかしたら、人目も憚らずに感極まって泣いてしまうんじゃないかと思ったぐらいだし、最高に幸せです。その直前まであまりついていない状態だったのも、すべて吹き飛びました。
このあと、JCに出るのか、有馬記念に出るのか知らないけど、これからもずっと応援させていただきます。
そして、去年の暮れから失っていた競馬への情熱を取り戻すことができました。もし、ディープインパクトがいなかったら、きっと競馬への情熱は二度と取り戻すことができなかったんじゃないかと思うと、まさに救世主的存在です。ディープには本当に「ありがとう!」と感謝の言葉を送りたいです。
そんなこと言ってたら、来週の天皇賞・秋で調子こいて挑んだ挙句に外して、凹まされたりして。