夏色(ゆず)

何で一年で一番寒いこの時期にこのタイトルを持ってきたかというと、昨日の「タモリのジャポニカロゴス」で、この曲の歌詞に日本語がおかしい箇所があるということで、ピックアップされていたからです。平井堅の「瞳を閉じて」やミスチルの「over」は過去にタイトルとして使ったし、X-JAPANの曲はタイトルを失念したので残っていたのはこれしかありませんでした。

X-JAPANの「鼻歌口ずさみ」は仕方ないとしても、「瞳をとじて」は指摘されるまで、間違いに気付きませんでした。よく考えたら、瞳って目の中の黒い部分に限定されているわけで、しかも閉じることはできないもんね。
で、正しくは「瞼をとじて」となるんだけど、何か一気に演歌っぽくなってしまったような気がします。それと、今まで書いた小説の中にも散々「瞳を閉じて」って使ってるもんな。掘り起こしたら、「瞳を閉じて、夏休みの間に起こった出来事を振り返ってみた」なんて一文を見つけちゃいました。今後気をつけます。

で、ミスチルの「over」だけど、「顔の割りに小さい胸」を「思いのほか小さな胸」に変えてしまっているけど、これじゃニュアンスが変わってしまうんじゃないかと。
「『お前って、顔がでかい割に胸は小さいな』と、ちょっと皮肉めいた口調で言っていた」ものが、「僕はそっと彼女の胸に触れた。思いのほか小さかった。」とちょっとエッチな響きになっているではないか。何だこの思春期の揺れ動く心を綴った青春小説は。思わず『ノルウェイの森』を読み返そうかと思ってしまったじゃないか(部屋にあるし)。言葉をちょっと変えるだけでこうも変わってしまうもんですかね。

でも、ゆずの「夏色」に関してはちゃんと理由が思いつくんですよ。
「ブレーキいっぱい握りしめてゆっくりゆっくり下ってく」って、ブレーキを目いっぱい握り締めたら普通は止まるはずなのに、ブレーキ壊れてんじゃないのって指摘はごもっともですよ。でも、現実問題、ブレーキをいっぱいに握り締めても止まらない自転車なんて結構あるんですよ。
特に前ブレーキ限定で握り締めても、意外と止まらないんですよ。急な坂なんてまさにそう。きっとこの曲の歌詞にある坂もそんな急な坂だったんじゃないでしょうか(関根さんもそんな指摘していたし)。ただ、急である上に長い長い下り坂だとかなり危険か。国土交通省公安委員会が黙ってなさそうだ。

だとしたら、こういう解釈も可能ではないかと。
「ブレーキいっぱい握りしめて (腹は)ゆっくりゆっくり下ってく」って。
つまり、君を自転車の後ろに乗せてブレーキを握り締めている状態ではあるけど、同時にお腹の調子が悪く、ちょっと下痢気味なので「ゆっくりゆっくり下ってく」状態なんですよ。こういう腹痛ってある種の波みたいなものがあるから、今は一旦は治まったのに、また波が来た(第二波が来た)ところなんですよ。
もし、実はこういう歌詞でしたってことなら、日本語は間違えていないと思うんだけど、それ以前に世界観をぶち壊しにしているか。やっぱり、自転車のブレーキの調子がよくないってことにしておこう。こういう性能がちょっと悪いブレーキの方が青春の一ページを語る上ではうってつけのアイテムだから。

使い古しの自転車だが、これが俺にとっての唯一の愛車だ。その愛車の後ろに彼女を乗せ、長い長い下り坂をゆっくり下っていく。ブレーキの調子がよくないから、いっぱい握り締めても、なかなか止まらない。
でも、それが快適なスピードを作り出し、心地よい夕暮れの風と一体化して駆け抜けていくのだ。
……って、これまた青春小説みたいだな。しかもNHK向けだし。